カシオ計算機の「早期退職募集」から見る、2021年の時計事業シェア拡大の展望
こんにちは、マッハです。
本日は、カシオ計算機の2019年に続いて二年連続の早期退職募集について思うことについてまとめていきたいと思います。
今回のテーマに関して、以前にこんなツイートをしました↓
『CASIO計算機』が去年に引き続き2度目の“早期退職”を募集し始めたそうです。
— マッハ@時計販売員 (@You2022) 2020年12月23日
構造改革の一環で、募集人員は定めていないが、100人程度を想定しているよう。
対象は、営業部門と総務や経理などのスタッフ部門に所属する“45歳以上”の正社員と無期雇用の契約社員(※50歳以上の管理職も含む)
前回のコロナ禍の決算でも黒字を維持したCASIOですが、元々人件費にお金を掛けない文化の企業。
— マッハ@時計販売員 (@You2022) 2020年12月23日
組織の若返りと経費削減を兼ねた今回の早期退職募集は、経営判断としては正しいかもですが、現場に残された社員の負担は大きくなることが懸念されます。
元ネタはこちら↓https://t.co/WjWMRHUMfE
本日は以下の流れで進めていこうと思います。
■二年連続の早期退職募集を実施
2020年12月末にこんなニュースが話題になりました↓
これだけ聞くと、
「おいおい、カシオさん大丈夫?」
「もしかして倒産の危機?」
「G-shockが買えなくなっちゃうの?」
みたいな話が出そうですが、そんなことは全くないのでご安心ください。
むしろマッハは、今回の希望退職によって会社組織として今まで以上に強固な体制を整えつつあると思っています。
というのも、今回の早期退職は実は二度目で、前回は2019年1月末に同社として初めて早期退職を募集しています。
(2019年1月31日)
この前回の早期退職の特徴として挙げられるのは、当時のカシオの業績自体は好調だったことです。
2019年の早期退職募集前の『2018年度 通期決算』は以下のようになります。
(カシオ計算機 2019年3月期決算資料より)
「売上高」は前年比で95%で前年を割ってしまいましたが、「営業利益」は前年比102%、「利益率」は10.1%という比較的高水準。
そして、「純利益」に関しては前年比113%と非常に優秀な結果でした。
さらに2020年、新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の危機によって時計業界が大ダメージを受けたにも関わらず、カシオは営業利益(本業の儲け)・純利益の黒字を維持しています。
(カシオ計算機 2021年3月期決算資料より)
上記は「2020年度の2四半期(上期)」の決算。
●セイコー
本業の儲けを表す営業利益は赤字です。
しかし、有価証券を売却した利益で最終的な純利益が黒字になるように調整されています。
これは事業で得た利益では無く、一時的な利益なので予断を許さない状況。
●シチズン
こちらは、ボロボロの決算になってしまいました^^;
とりあえずシチズンのダメージが三社の中では最も大きいということは理解できるかと思います。
話を戻すと、カシオの時計事業は高収益体質かつ不況に強いのです。
この要因は、皆さんご存知のカシオの大看板である『G-shock』という圧倒的なブランド力と機能性の高さによって、
・販売員が説明しなくても売れる
・目ぼしい競合がない
状況を作り上げたからです。
ただ、この話をしだすと長くなるので別の機会に譲りますが、このコロナ禍においても黒字を維持するカシオの「不況に対する強さ」には驚きを隠せないのです。
Twitterのとあるフォロワー様の言葉を借りると、
『カシオはG-shockだけでなく会社もタフ』
ということになります。
■早期退職の目的は『社内の構造改革』にあり
これまででカシオがいかに高収益で不況に強い会社であるかをご理解いただけたかと思います。
では、なぜコロナで売上が落ちたとは言え、利益が黒字であるカシオが早期退職を募らなければいけないのでしょうか。
その目的は、社内の構造改革にあると思います。
まず、カシオ計算機を知るにはこの記事が参考になります↓
【2020最新】カシオ計算機の年収は?職種や年齢別の給与・ボーナス・評価制度などまとめ! | career-books
こちらの記事によると、
ちなみに、個人的なカシオ計算機のイメージとして「働いている社員の給料が低い」のかな、と思っていましたが、
全国の上場企業約3000社を対象にした平均年収の調査において、カシオ計算機の平均年収813万円は、上位10%の高水準
ということなので、 そういう事ではなさそう。
むしろ正社員は、会社側からすると高すぎる給与水準なのかもしれません。
さらに、従業員数は11,193人(2020年現在)。
コロナで雇い止めになった人(契約社員など)もいると思うので、執筆現在(2020年末)はもっと少ないかもしれません。
つまりこれらから考えると、45歳以上の社員の早期退職を募集する「構造改革」によって、組織の若返り&スリム化(コスト削減)を図りたいのかと思います。
言い方は良くないですが、企業からすると人件費はコスト。
そこにはできるだけお金を掛けたくない、というのが経営側の本音でしょう。
とりわけ45歳以上の社員に関しては、
・一部の社員は給料に対して生産性が低い
・若い世代に対してモチベーションや伸び代がない
・若い世代よりも時代の変化に対応しにくい
などの理由から希望退職の対象になりやすくなるのです。
長く勤めあげてきた従業員に対しては残酷過ぎる現実。
本当に冷酷です。
ただ現実問題として、会社の生存や利益を第一に考え早期退職やリストラが行われている現状を見ると、外野がどうこう言っても変えられる問題ではないのかもしれません。
もちろん、会社としては正しい選択だったとしても、それがそこで働く従業員にとっても恩恵があるかと言えば必ずしもそうとは限りません。
当たり前ですが、希望退職を募って社員数が減ったとしてもやるべき全体の仕事量は変わりません。
つまり、残された社員の負担は増えるわけです。
さらに、
「年齢を重ねると自分も早期退職を勧められるのではないか」
という経営陣に対する内部の不信感や不満は高まっていくことが多い。
あくまで一般論としてですが、早期退職を行った会社に残された社員は上記のようになりやすいのです。
■2021年、国内勢ではカシオ有利の展開か
ただそうは言っても、前回と今回の退職の募集によって、会社としてはさらに利益の出しやすい体質になったことは事実です。
実際に、2020年上期(4~9月)現在の主要時計メーカー(セイコー・シチズン・カシオ)の売上高は、
セイコー:約434億円(昨年対比:約61.1%)
シチズン:約381億円(昨年対比:約52.7%)
カシオ:約605億円(昨年対比:約72%)
となっており、主要3メーカの中でもカシオの売上高が一番大きく、さらに昨年対比を比べた時の相対的なダメージが小さいことが挙げられます。
このことからも分かるように、2021年の個人的な予想としてはカシオ有利の展開で進んでいくのかなと思います。
つまり、現状3社の中でトップである時計事業の売上高のシェアを拡大していくであろうと予測します。
先ほども見た通り、セイコーやシチズンは上期までで営業赤字ということで、立て直しに時間が掛かることが予想されます。
特にシチズンは、インバウンド需要に頼る割合が大きいためコロナの感染が落ち着き、海外からの旅行者が戻らない限り売上の拡大は難しいでしょう。
さらに、
・スマートウォッチ(Riiiver系)
・機械式
・高額帯(エコドライブワンなど)
などの不採算な分野に関して見直しが必須でしょうから、分野の縮小・撤退、人員整理を含めてまだ少し時間が掛かりそうです。
セイコーに関しては、在庫金額や銀行などのからの借入金が増加していることからも、財務状況が悪化しています。
つまり財務状態を健全化しようとしたら、当然ながら販促費・広告費・人件費等に回せる資金は限られてくるわけす。
ということは、売り上げが伸びづらい状況になるわけです。
そういったところからも、主に販促費・広告費などに回せる資金に比較的余裕があるカシオが2021年にシェアを拡大するのではと予想しています。
■最後に
以上本日は『カシオ計算機の「早期退職募集」から見る、2021年の時計事業シェア拡大の展望』ということで、カシオの早期退職募集の目的と、時計事業の優位性を数字を使いながら解説していきました。
やはり時計ブランドはイメージや印象で語られがちなところがありますが、その実態は決算などの数字を見なければ見えてこない部分も多いです。
もちろん国産ブランドの良さや魅力も伝えていきますが、そこらへんの数字を交えた実態の部分も、時計業界で働いている者として今後も皆さんにシェアできればと思ってます。
普段はTwitterもやってしているので、今回の記事の感想や質問などあれば気軽にリプやDM頂けると嬉しいです。
以上、マッハでした!